デザインは、人びとの思いを具現化するものでもあります。震災を経て、大きな悲しみがあり、同時に新たなつながりが生まれました。個々人の思いの力が強くなっている浜通りだからこそ、デザインの力が求められています。今回紹介するのは、富岡町といわき市、浜通りの2拠点でグラフィックデザインやグッズ製作の活動するKUMA YUKAさん。自らの仕事を「デザイン屋さん」と呼ぶ彼女にとって、デザインはどのような意味を持つのでしょうか。
取材・文・写真/森 亮太(mogura)
Shiome Creators File no.7
KUMA YUKAさん
地域の中のデザイン屋さんとして
−現在の活動を教えてください。
KUMA DESIGN WORKSという屋号で、グラフィックデザインやグッズ制作などを行なっています。震災時、双葉郡富岡町に住んでいたことが縁で、富岡町のまちづくり会社とみおかプラスさんからデザイン業務の委託を受けており、現在は主に富岡町で活動をしています。いわきに住みはじめてからは、少しづついわきでの仕事も増えてきました。
子どもの頃から絵を描くのが好きだったし、学生時代は映像作家になりたかったのもあって、将来はクリエイティブなことに関わったことをしたいとは思ってました。でもいざ社会人になったらやりたいことがなかなかできなくて。フリーターをしながら作品を作ったりしていたのですが、生活の為に就職をしたら接客やら営業職やらで、だんだん生活に追われて時間は無くなって。20代でなりたいものになれる人なんてごく一部だよねって、世の中に対して拗ねていましたね。何回も転職して、自分の天職を探していました。
これまでの仕事関係のつながりや震災後のつながりの中で、コツコツと実績を積み重ねていつのまにかデザインが仕事になっていました。遠回りに思えたような、フリーター時代や会社員時代に得た経験と知識が今のデザインの仕事にすごく役立っています。経験があるから、クライアント様の悩みや要望が分かるし、依頼されたことに加えてさらにデザイン以外の部分でも提案が出来る。それはすごく喜んでもらえますね。

−今までの活動で印象に残ったものはなんですか?
2018年8月11日に富岡町で開催したとみROCKが一番大きいですね。
富岡町在住の平山勉さんに「富岡町でフェスをやりたい」っていう野望があって、そこに、とみおかプラスさんの「町に人を呼べるイベントを作りたい」という計画が合致してスタートしました。私はとみおかプラスさんのデザイン業務に携わっているので、ロゴを作ってよというところから関わりはじめました。
柔らかい感じのほのぼのした音楽イベントではなく、とにかくかっこいい感じのゴリゴリなロックフェスにしたいと思っていたので、ビジュアル面で支えられたかなと思っています。結局はロゴデザインだけに留まらず、チラシ・ポスター・ホームページの作成、グッズの制作、運営の計画、SNSの管理など、運営全般をやっていました。本当に色々あって、今考えるとどうやってこなしていたんだろうというくらい大変でした。思い出しても二度とやりたくないと思うぐらいですね(笑)
準備期間が3ヶ月ぐらいだったので、とにかく無事に終わらせなきゃと思ってやってました。初めて富岡町でやるロックフェスということで、一発目の印象が大事なので、お客さんにどうやったら楽しんでもらえるかとひたすら考えていました。
フェスが終わった後に、インスタグラムとかを見て、一般のお客さんでアツく語ってくれている投稿をいくつか見かけて、その人にとっても、あの日あの場所に行ってフェスに参加したことがその人の人生においてもすごく重要なことだったっていうのを感じて。みんな宝物のようにタオルやTシャツの写真もアップしていて、それを見たときは泣きました。『震災後から辛かったけれど、会場に行って救われた』みたいなことが書いてあって、感無量でした。そんなイベントを創ることに関われたということは、それからの自分が作るものに対しての自信になりましたね。


−今後の展開をどう考えていますか?
成り行きで今の仕事をしていることもあって自分ではデザイナーって思ってないんですよ。デザイン屋さんと名乗っていますね。デザイナーって言葉に結構かたい印象があって。それに比べてデザイン屋さんっていうと、お花屋さん、お魚屋さんみたいに、それを買えるってイメージになりますよね。デザイナーに頼むっていうと敷居の高いことみたいに思われがちですが、普通にみんながデザインを買うということが出来るようにしたいと思っているんです。DIYやハンドメイドのように、プロが行うデザインやものづくりも、もっと生活に身近にあってほしいんです。欲しいのに自分では作れない、じゃあデザイン屋さんにお願いしよう、みたいな。そもそも、それを作れること自体を知らなかったりするものもありますよね。
そういう類の制作で最近ご依頼を受けているのが、ブライダルグッズ、例えば招待状とか席次表のデザインですね。新婚のお2人らしいオリジナルデザインで作ってみたいっていう依頼をいただいて、制作することをちょっとずつ始めています。それってすごくわかりやすいクリエイティブの形ですよね。記念にもなるし、ずっと大切にとってもらえるっていうのは作った者としては嬉しいですし。イベントの告知チラシなんかは終わってしまうと処分されるだけですからね(笑)そういうものづくりも仕事として今後は確立させていきたいと思っています。
KUMA DESIGN WORKSという屋号のWORKSには工房という意味もあります。将来的には、ほんとに工房を作って、お客さんが来て、こういうものを作りたいんですよ~って入ってきてもらえたらいいなと思ってます。お花屋さんに花を買いに行くみたいに。併せて、デザインというのは買うという価値があるものだということも一般に認知してもらえたらとは思いますね。
夫が住宅デザイン設計の仕事をしていて、店舗やインテリアのデザインをやっているので、連携して仕事をすることも出てきました。工房で、家具とかお家のデザインも相談できるとか、面白いだろうなあと。それをやるなら、いわきかなと考えています。
−いわきの潮目、どう感じますか?
いわきって自由だなって感じます。いわきで暮らしていて楽しいって思うことが多いですね。私の感じ方ですが、いわきの人は内輪だけでなく、オープンなんですよね。いわきってイタリアっぽいなとずっと思ってて(笑)。初めましての人も受け入れてくれるし、陽気ですし、そんなに気を遣いすぎることもない。仕事も遊びも、うまくバランスをとってやっていて。
アートや音楽のイベントがたくさんあって、色んな活動してる人が多いところも楽しいですよね。その辺の交流は、渦巻きみたいなものだと感じます。そこに飲み込まれても楽しいし、外から見ていても楽しいし、すごく自由。そういう自由でいてもいい気楽さが、自分には合っているなと思いますね。
今後もそんないわきと富岡で、浜通りを行き来しながら2拠点での仕事を続けていきたいと思っています。
笑顔でインタビューに答えてくださったKUMAさん。ありがとうございました!
氏名 | KUMA YUKA(くまゆか) |
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地域での活動 | 「双葉郡未来会議」参画 「とみROCK2018」実行委員 「わくわくフリマ」主宰 |
プロフィール | デザイン屋さん(フリーランス)。 郡山市出身、いわき市在住。様々な職業経験を経て、いつのまにか現在の働き方に。震災当時は、双葉郡富岡町に在住していた縁で、まちづくり会社や地域団体に参画。デザイン業のほかに、趣味でイベントなども主宰。 「歴史の記録に残らなくていいから、誰かの楽しい記憶に残るものを創る」を創作理念にしている。 |
連絡先 | LINE@ KUMA DESIGN WORKS @jdu7900v WEBサイト・SNS https://www.instagram.com/kuma_chooon/ さくらの森shop https://www.facebook.com/sakura.no.mori.shop/ |