佐藤有佳里さん ごちゃまぜの場をつくる

障害のあり、なしにこだわらずそこにいる全員でその場をつくっていく「ごちゃまぜ」のイベントが市内各地で開催されています。実施しているのはいわき市内郷に事業所を構える特定非営利活動法人ソーシャルデザインワークスです。障害者就労移行支援と自立支援を主な事業として行っていますが、活動はそれだけにとどまりません。個人や企業、時には行政とイベントをつくりあげていく根本には何があるのか。今回は法人の副法人理事佐藤有佳里さんにお話を伺いました。

取材・文・写真/木田 久恵(とまり木編集部)

 

Shiome Creators File no.5
佐藤 有佳里 さん
ごちゃまぜの場をつくる


 

—最初にソーシャルデザインワークスについて教えてください

佐藤:まずソーシャルデザインワークスの会社として「すべての幸せを追求するとともに諦めのない社会を創る」という理念があります。すべての仲間の幸せを追求するという理念のもと集まった私たちは、働きたい人のサポートをする「障害者就労移行支援」という事業と、生活していく、生きるということをサポートする「自立訓練」という事業のふたつを行っています。

さらにソーシャルデザインワークスは個人に対してだけではなくて、社会に対してもアプローチしていきたいなと思っています。やはり個人が頑張っても結局社会、その受け入れる側が、お互いを知り合う社会じゃないとそもそも成立しません。法人として「ごちゃまぜ」という、障害の有無とか年齢とか性別とかどういう人が好きかとか、そういうところで差別されない、いろんな人がいてお互いの違いを認識した上で生活ができる社会を作るために、イベントをやったり、今日みたいにパークフェスで出店して、そういう思いが詰まった『GOCHAMAZEtimes』を渡したりしています。

また、地域格差をなくしたいとも思っています。例えば東京では福祉においてもたくさんの選択肢があります。でもいわきにはまだ足りないと思っています。選択肢を増やしながら、今までになかった福祉を形にできたらいいなと思っています。

 

—ソーシャルデザインワークスの事業所ソーシャルスクエアはカフェのような雰囲気ですよね。あれも今までにない福祉を形にするという考えからですか

佐藤:そうですね。福祉ってあまりかっこいいとか、おしゃれなイメージがないと思うのですけど、そこを変えていきたいと思っています。福祉はもともとみんなが幸せになるためのものです。でもなんとなく、私の感覚だと社会とか地域が「これ用意したからこれでいいでしょ」というように、自分で選択できていない気がします。

障害があるとかないとかじゃなくて、あそこに行きたいとか、ああいう場所で何かしたいとか、こんな場所に通えたら嬉しいとか。そういう選択ができるようになればいいなと。もちろん今の福祉を選択して働いている方たちの動機や思いもありきで、もうちょっと福祉がかっこよくおしゃれになって、あの会社で働くか!とかかっこいいから行く!ここでやりたい!と働く側も福祉が選択肢となるような意識の変化が起きたら面白いなと思っています。

 

|ごちゃまぜなイベントとは?

 

—実際にソーシャルスクエアに通うまでの間に、ごちゃまぜのイベントに来ることはありますか。

佐藤:ありますあります。親御さんだけ雰囲気を見に来ることもあります。でもごちゃまぜはそういうことを気にしてない人の参加も多いかもしれないです。ただ参加したいからとか、ただ畑行きたいとか、運動したいとか。そういう人たちが参加して、いろんな人がいるな、みたいな。

 

—広報自体はどのようにやっていますか。

佐藤: Facebookとかチラシで、コラボレーションする人がいろんなところにお知らせしてくれたり、スタッフがどこかに行くときに宣伝してくれたりとか。私たちの手の届く範囲でやっています。

 

—ごちゃまぜタイムスを読むとイベントの多様さに驚きます。一緒にコラボレーションする相手はどうやって見つけるのですか。

佐藤:イベントをやりたいから人に会いに行くというよりは、人と出会ったときに「ちょっと一緒にやっちゃう?」みたいなのが多いかもしれないですね。「何かやりましょう」と声かけるのではなくて、知り合って話しているうちに「個人的にこういう活動していて、地域向けに何かやりたいと思っているんです」「じゃあ、ちょっとやってみませんか?」みたいな。最初のうちは私たちもノウハウがあるわけではなかったのですが、とりあえずやってみようという気持ちはありました。

 

—実際にやってみるのとやってみないのとでは全然違いますもんね。

佐藤:もちろん何がやりたいかっていう、私たちの思いもすごい大事なところだと思うんですけど、地域の人たちの何かやりたいなって言う気持ちもすごく大事だと思っていて。それが一緒になったときにらコラボイベントが生まれるかもしれないです。

 

—いつから開催しているのですか?

佐藤: 2015年に三坂の廃校を使って行った芋煮会が初回です。浜魂に登壇していた方が廃校を使って何かやりたいと発表されていたので、じゃあ一緒にやっちゃうみたいな。私たちも初めてだったので、何を用意すればいいのか全然わからわからなくて、めちゃめちゃいろんな人に助けてもらいました。それこそ廃校借りるってどうするの?というところから。申請ってどうやるのとか、学校使ったら掃除しなきゃいけないけど、その掃除道具どうしようとか。そういうのをいろいろ教えてもらったりとか、こうしなければいけないんだよ、じゃあそれやります!みたいな。ほんとにいろんな人に助けてもらってイベントができました。

 

第1回目のごちゃまぜイベントの様子

 

|やってみて、見えてきた変化とは?

 

—そのときにもうごちゃまぜの概念はあったんですか。

佐藤:そうですね。すごくざっくりだと思いますけど。障害のあるなしとか、性別とか、そういうの関係なくみんなが一緒に楽しめる時間という概念はあったと思います。いま地域が生き残っていくためには、その概念がないと厳しいのかなっていうのをすごく感じています。障害があるとかないとか、そういう次元の話じゃなくて、これだけ人口が減っていく中で、お互いのことを知らないままでは生きていけないんじゃないかって。

平成30年から精神障害のある方の雇用が障害者雇用率算定の分母に入るようになります。今まで障害者雇用のカウントに入ってなかったんですよ、それも不思議な話なんですけど。より障害があるとされている方達の雇用が進んでいく。働き手が少ない現状で障害がある方の雇用が増えるということは、職場での障害がある方の割合が増えていきます。一緒に働くようになる。今まで発達障害とか精神障害にフォーカスされていなかったけど、社会の中でそういう単語が広まってきて、認識されるようになってきました。

でも、その人たちが増えてきてるわけではなくて、もともと地域の中にいたんですよ。そういう言葉で認識しなくても。みんな地域の中で生きていて、生活しているんです。その人たちを障害者として捉えていくんじゃなくて、そういう特徴のある人というふうに捉えられれば、地域はすごく良くなっていくのかなと思っているんですよ。

 

—ソーシャルデザインワークスのなかに限った話ではなくて、地域全体を考えてるのですね。

佐藤:そうですね。もともとソーシャルデザインワークスって、社会をどうデザインしていくかっていう意図があって、この会社の名前がついているので。

 

—いわき市はそのへんはどう思っていますかね。

佐藤:全国的に地域包括を考えるという流れになっていて、いわき市でも動いてる人はいます。それを発信しようという動きもあって、それこそ「igoku」とか、日常的に行われてきたことを良い雰囲気で発信していくことで、これは良い取り組みじゃんとか、かっこいいじゃんとか、こういうのだったら自分もできるかもとか、見ている人も思えるのが大事かなと思います。いわきの全員がそう思ってるっていうわけじゃないかもしれないですけれど、そういう動きはある。私がソーシャルデザインワークスに加わったのが2年半前で、その間にソーシャルデザインワークス自体も、いわき市も変わってきていると思います。

 

—それはどのような変化ですか?

佐藤:私たちは、いろんな人に関わることによって、今まで知らなかった世界を知ることができるようになりました。私たちにはもともと障害という大きなテーマがあって、そこにある心理的なバリアをなくすためにごちゃまぜというイベントをやっています。回数を重ねるうちに地域やスポーツ、文化などが絡んできて、今までなかった視点が私たちの中にも入ってきて、イベントや概念は少しずつ広がっていってるなーと感じています。

いわきとの関わりというところでは、ごちゃまぜを知ってる人が増えたと感じます。行政主体でこういうイベントをやりたいけど、どのように障害のある方を巻き込んだらいいかといった相談も増えました。それはすごく嬉しいです。大きい規模でイベントができることが嬉しいんじゃなくて、行政としてやりたいと思ってもらえていることが嬉しいかなぁと思っています。行政がイベントに関わることで今までとは違った方々に届いていくので。本当に薄くかもしれないですが、ごちゃまぜという感覚があると知ってもらえるのは嬉しいなぁと思っています。

 

—行政からもそういう声がくるんですね。

佐藤:そうですね、ユニバーサルデザインとか、スポーツとか。ごちゃまぜをいいなと思ってやってみたいと思ってもらえたということがわかりました。

 

昨年秋に行われたいわき市市民生活課とのコラボレーションイベントの様子。スポーツを通じてユニバーサルデザインを知る機会になりました。

 

|「ごちゃまぜ」と「潮目」

 

—最後に潮目と聞いて何か思うことはありますか。

佐藤:あー海っぽいなぁとか?(笑)そうですね。ー潮目といえば交わるイメージがありますが。交わること自体をやっている会社なのかなと思っています。それが繋がってるのかなあというふうに思うんですけど。どの時代に生きている人も「いま激動の時代だぞ」と思って生きていると考えています。

今は結構どこに行っても「今時代が大きく変わる時」って言う単語よく聞くのですが、どの時代に生きていた人も、そういう変化するとか、時代が変わるぞというのを経験しながら生きてきてるんじゃないかっていうふうに思っているんですよ。それを変えているのって誰かじゃなくて、誰しもというか、私。と、すごく思っているんです。個人的な思いや動きがつながることで、変化を見せていくんじゃないかと思います。私はどっちかっていうと変化を起こしていきたいというか、福祉の事だけじゃなくて、環境や教育など、いろんなことがもっと変わっていったらいいなぁと思っています。

だから何か思うことがあれば自分の中に留めておかないで表現したりとか、いろんな人と話したりとか、そんなふうに変わっていったらいいなと思っている人たちと、そうじゃない人たちとも、会話をしながら前に進んでいけると良いのかな、と。

 

—それを実行する場としてソーシャルデザインワークスっていうのは。

佐藤:実行する場ととしてはどういう方向性でも叶えられるかなぁなんて思っています。私たちは人を採用する際に確かに社会を変えたいなと思ってる人がいいなと思ってはいるんです。だけど、同じ業種や、同じことやってきた人たちを集めたいとは思っていません。異業種とか、考え方とか、年齢とか、性別はまぁもちろんそうですけど、自分の当たり前、介護の当たり前だけじゃない、いろんな当たり前を揃えたいんです。

その中で私たちがお互いあきらめないで、みんなが楽しく過ごすためにはどうすればいいかっていうの会社のなかだけでなく、できれば地域で考え行動したいと思っています。それぞれ当たり前が異なる人がいっぱいいたらその分できることも、考えられることも増えるし、逆にお前は違うんだということはないと思ってるんです。

例えば発達障害と言われる人たちは、みんなと違うとか、当たり前のことができないとか、みんなと違った感覚だとか言われますが、それがみんなにとって都合が良くないから悪いとなっているだけで、場所によってはそれが優れてたりするかもしれないし。だから、視点を変えて見ていけるかってのが勝負かなと思ってるんです。そういうのを強みにできる集団でありたいなと思っています。

 

明るく話す佐藤さん。その目は未来に向いていた

 

氏名 佐藤 有佳里(さとう・ゆかり)
プロフィール 福島県双葉郡富岡町生まれ。小学生の時に手話やろう者と出会い、障害有無による社会での待遇の差に違和感を感じながら学齢期を過ごす。 専門学校で福祉と手話通訳について学び、卒業後は聴こえない方専門の接客窓口ソフトバンク渋谷手話カウンターで勤務。株式会社LITALICOで療育を経験し、現在のNPO法人ソーシャルデザインワークスでの就労移行支援や自立訓練の事業所運営に至る。 障害、年齢、性別、国籍などで「諦める」ことのない社会、色んな人が居る「ごちゃまぜ」な社会でその人らしく生きられる地域の仕組み作りに取り組んでいる。その他にもエシカルでサスティナブルな社会の仕組みに関心が高く、個人的に活動中。