Mika Itohさん 芸術の息遣いを北茨城に伝えたい

県北芸術祭や桃源郷芸術祭などアートイベントが盛り上がっている茨城県から、いわきのクリエイティブを求めて足しげく通う一人の女性がいます。彼女の名はイラストレーターのMika Itohさん。本業のかたわら、イラストのみならずフィルム写真やクラフト作品までマルチにこなす若手クリエーターです。北茨城市といわき市の2拠点での活動をする彼女はなぜいわきにまで足を運ぶのでしょう。

取材・文・写真/森 亮太(mogura)

 

Shiome Creators File no.4
Mika Itoh さん
いわきの芸術の息遣いを北茨城にも伝えたい


 

-現在の活動を教えてください

現在北茨城といわきの2 拠点でイラスト作家やフィルム写真、クラフト作家をやっています。Trabantという屋号で活動していて、主にクラフト雑貨をインターネットショップやGOOD TIMEやrojimaなどのフリーマーケットのイベントで販売しています。

最近の活動でいうと、2018年11月にいわき市植田のカフェkiitosさんで1ヶ月間個展『MY ROOM』をやらせていただけることになりました。写真のグループ展は参加したことがあるんですけれど、自分のイラストを展示するのは初めての機会で。いつもkiitosのマスターにお世話になっていて、いろんなイベントにご一緒させていただいていた縁で個展をやることになりました。

Kiitosさんとのお付き合いは2年くらいなんですが、LINEのコラボスタンプも作っています。去年からやってる、クリーニングDAYっていうイベントを5月と8月にやってるんですけど、そこに水彩画のワークショップも含めて出させてもらっていて。クリーニングDAYというのは、フィンランドが発祥なんですけど、アップサイクルをテーマにしていて、不要になったものを新しくまた使うという感じですね。フリーマーケットにも似ています。包装紙を集めるのが好きだったりするので、包装紙を使った袋を作って販売をしていました。

Trabantは2014年8月に立ち上げました。イラストもそうなんですけど、ものを作るのが基本好きなんですよね。アクセサリー作るのも好きで。でも自分だけに作っていると、作りすぎちゃうので。2013年に初めていわきに来て、小名浜にあるオルタナティブスペースUDOK.の部員になったのが翌年2014年2月だったのですが、UDOK.のあるメンバーに、インターネットショップとか今はいろいろな販売方法があるからやってみたらと言われて。それがきっかけでお店を始めて、様々な人と繋がりができました。

北茨城といわきの2 拠点で活動してますけど、活動自体は田舎に住んでいる時点で限られてしまってきていて、固定ファンがいるっていう感覚はあまりないです。でもそれでいいんじゃないかって思っていて。発信していれば何かしら反応が返ってくるのが楽しくて。もっとうまいことを SNS を活用していけたらいいなと思っています。

 

いわき市植田にあるCAFE Kiitos。2018年11月30日まで個展「MY ROOM」が開催されている。カフェ自慢のカレーと美味しいコーヒーを頂きながらゆっくりご覧になってはいかがだろうか。写真・ポストカードの一部は購入可能。CAFE kiitos 〒974-8261いわき市植田町本町3-9-1伊藤ビル1階、火・水定休。木・金11:30-14:00、日11:30-18:00、土・月11:30-19:00の営業

 

-Mika Itohさんにとってイラストとは何ですか?

自分にとってのイラストは、なんだろうなあ。 好きなことはたくさんあるけど、マンホールの蓋のように自分にぴったりはまったものですね。

イラストは今まで独学でやってきて、特徴的なのは描き方ですかね。結構流動的に変えたりするのですが、本当に変わった使い方をするんですよ。4Bとかのめっちゃ柔らかい鉛筆、あれって美術などでは下絵を描く時に使うんですけど、私は影をつけるのに使うんです。その使い方をしないだろっていう使い方をするので、本当に美術を勉強してきた人からするとなんだよっていう感じがすると思うんですけど。変則的な書き方だからこそ独特な雰囲気っていうのは出ているのかなと思います。

小学校の図工の時間とか、イラストとか、小さい頃から絵の時間がすごく好きだったんです。市主催の写生大会もよく行っていて。ある時、美術協会の会長さんが来ていて、今でも覚えている印象的な話があります。


「ある子どもが絵を描いた、そこには空の上に月と太陽が同時に出ている絵を描いた。親は『太陽と月はどっちかしか出てないでしょ』と怒ったけれど、どっちも出てる世界は子どもにしかなくて、そこには月と太陽が仲良しだから出てるっていう価値観で書かれているんです。絵の書き方も人それぞれで、小学校の図画工作では書き方は一つしか教えないし、そこから外れると除け者にされるけど、ここに参加しているみなさんは自分の世界観と自分の書き方を大事にしてください。」


私の親とかも授業で書いた絵を見て、いろいろ言うんですよね。この書き方がおかしいとか。でも小学生ながら、納得いってなかったんです。この書き方が楽しいのになんで? って。自分はその言葉がきっかけとなって自分の書き方を辞めずに続けることができたんですよ。

今年も水彩画ワークショップを何回かやらせてもらっていますが、結構絵が苦手なんですっていう方がいたりするんですよね。詳しく話を聞くと、小さい頃に親や先生から教わった書き方が辛くなって描くのを辞めたとか、そういう人が結構多かったんです。そういう話を聞くと、絵を描くことをもっと気楽に楽しんでもらえたらと思いますよね。美術やイラストに関わる人口を増やしたいという高尚な気持ちではなく、描くのは苦手だとかイラストに良い感情を持てない人たちの気持ちをほぐせたらいいなと思っています。

 

イラストを本格的に始めたのは中学2年生の頃。モータースポーツが好きで、モータースポーツ誌の読者投稿欄にドライバーのイラストを投稿するようになったことからイラストを描くようになったという

 

-茨城県から足しげく通うMikaさんにとって、いわきでのクリエイティブはどう感じますか?

最近では北茨城でも美術とかアートが身近にあるような環境が整ってきつつありますが、私がいわきに来るようになった2013年頃は、自分が見たい芸術とか、自分が触れたい芸術がとにかく近くにありませんでした。でも東京に出るのにはお金がなくて、悶々としていた時に初めていわきに来たんです。初めていわきに来た時には、車で40分圏内ぐらいの所にまさかこんなに芸術を感じられる場所があるとは、と驚いたのを覚えています。

最近面白かったことだと、この前、小名浜にある旧グリーン劇場でグラフィティの制作をやっている時にたまたま遊びに行ったんですよ。実際にやっているところを見るとびっくりするのですが、スプレーなのに筆で書いてるように描くんですよ。これって生で描いているところを見ないと分からないんですよね。絵の具の匂いや塗料の匂いもするし、描いている人の空気感というのもあるし、訪れた人にどういう説明をしているか、そういうのを聞いていても想いが汲み取れるわけじゃないですか。

例えばオラオラ系の人が描いているとすると、風貌だけだとめちゃくちゃ怖いけど、描いている現場を見ると、誠実に芸術としてグラフィックアートを極めているのが分かったりするんですよね。固定観念が崩されて抵抗がなくなってくるんですよ。もっと見たいってなる。

美術館で見られるのは、完成品ばかりなんですよね。要するに、アートスペースのもりたか屋さんとかいわき市内で行われているアートイベントの玄玄天もそうだと思うんですけど、いわきって芸術文化の発信拠点、見せる場って言うんですか、完成品じゃなくて出来上がっていくところを見れる場が充実していると感じています。その過程も見れるし、参加もできるんですよね。そういう発信の仕方っていうのは、今でも地元北茨城にはあまりないと感じています。

 

茨城の大学に進んでから、イラストを描くのをやめていたMikaさん。就職後、会社を辞めてUDOK.に訪れるようになって、再び筆をとるようになったという。ここでは、肯定的な意見だけでなく、「こうした方がいい」というようなアドバイスもらえることが彼女の刺激となっている

 

−これからの展開について教えてください。

今後は、自由に創作できるようなスペースに加えて、カフェとかセレクトショップを融合させた場を地元の茨城、県北で作りたいと思っています。スペースで制作をしている人たちの作品をセレクトショップで売るとか、田舎のクリエイターの認知度を高めて、地域の交流とかもできるようにしたいなと思っています。自分は、店長兼キュレーターのような立場で。

他のクリエイターさんとの交流の場とか、地域の人達に対して発表の場とか、そういうのが田舎は極端に少ないので。だからこそ、閉じこもって最終的に道を諦めてしまうとか自分の楽しいことを諦めちゃうみたいな人が多いと感じています。例えば親の面倒を見なきゃいけないっていう理由で地元に帰ってこなきゃいけなかったりとか、自分も含めてですが、都会に出れないっていうクリエイターさんもいるんですよね。都会に出なくても、好きなように表現できる場を作りたいです。

今、ぼんやりしたものを具体的にしたくて、茨城県北ローカルベンチャースクールに通ってます。ベンチャースクールっていうぐらいなので何かやってみたいっていう人たちがいっぱい集まっていて刺激を受けますし、大学でマーケティングを勉強していたのでそれを活かせるのが楽しいですね。

いわきに来たら玄玄天をはじめアートイベントがやってるし、芸術に理解がある人がたくさんいる環境があるんですよね。身近にそういう環境があるっていうのが心強くて。そして発信する場に参加できるのが嬉しくて。最近、北茨城でも桃源郷芸術祭が始まって、現代芸術とか最新の芸術に触れる機会が地元でも増えてきたからこそ、いわきの現代芸術家の発信する文化や、シオカゼマルシェでのキュレーションの経験を地元に持ち帰ってさらに発展させていきたいなと思っています。

 

明確な決意を持って、力強くインタビューに答えてくださった
氏名 Mika Itoh
プロフィール 1990年茨城県生まれ。幼少期より絵や図画工作に親しむ。2014年より、いわき市小名浜にあるオルタナティブスペースUDOK.部員。本業の傍ら、ハンドメイド雑貨のミニマルブランド「Trabant」を立ち上げる。現在は、いわき市と北茨城市の2拠点で独学のイラストレーションとフィルム写真を中心に制作活動中。
地域での活動 「小名浜本町通り芸術祭」実行委員会、「シオカゼマルシェ」ディレクター
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