ウザワリカさん デザインの力を浜通りに

地方発のクリエイティブに欠かせない「デザイン」。特に震災後は、福島県やいわき市のできごとを外に伝えるため、質の高いデザインが求められています。同時に新たな担い手も生まれ、いわきのデザインシーンは活性化しています。今回紹介するのは、震災後にいわき市に拠点を構えたデザインユニットmaruttのウザワリカさん。ウザワさんにとって、いわきでデザイナーとして活動することには、どのような価値があるのでしょう。

取材・文・写真/森 亮太(mogura)

 

Shiome Creators File no.3
ウザワリカ さん
デザインの力を浜通りに


 

−現在の活動をこれまでの経歴なども含めて教えてください。

ウザワ:現在、南相馬市小高区でNext Commons Labに勤務しながら、いわきを中心にグラフィックデザインの仕事と、ソーシャルデザインワークスのデザインアドバイザーなどをしています。

東京では自分のデザインの師匠である大箭亮二さんの元で7年半仕事をして、その後フリーランスを目指し、テラエンジンなど複数のデザイン会社を経て、いわきに2017年3月末に活動拠点を移しました。WEBマーケティングが本業の夫も東京でなくても仕事ができるということもあり、フリーランスになるタイミングと、たまたま親が住んでいたマンションを空けるタイミングが合ったので夫婦でいわきに来ました。

友人からヘキレキ舎の小松理虔さんや、植田印刷所の渡辺陽一さん、デザイナーの高木市之助さんを紹介してもらっていて、デザイナーとして仕事ができる土壌があるなっていう感覚が自分の中にありました。それもこちらに帰ってきた大きな理由の一つです。

 

仕事道具のMac Book Pro 。前職の社長から餞別でもらったものだという

 

 

デザインの仕事の中で印象に残ったものはなんですか?

ウザワ:いわきでのデザインの仕事の中でも印象に残っているのは、いわきアリオスの開館10周年のお面です。イラストレーターのtupera tuperaさんの住む京都まで原稿を取りに行ったこと、2週間近く植田印刷所に社員のように通って、渡辺陽一さんと色味の調整を粘ったことが印象に残っています。もともと切り貼りしたコラージュ作品でしたので、実物の蛍光部分などの発色をプロセス4色(CMYK)で表現することに試行錯誤しました。

最初のオーダーは冊子だったんです。アリオス開館に寄せて、谷川俊太郎さんが4編の詩を作っていました。詩をもっと多くの人に親んでもらえるような10周年記念のリーフレット、冊子を作りたいという依頼で。イラストはtupera tuperaさんで決まっていて、アリオスの広報担当の飯田さんから「間にデザインで入ってくれる人」ということで私に話を振っていただきました。

お面のアイデアに決まるまでは、飯田さんと熟考を重ねました。普通に考えたら、詩に合う絵を載せて、それを数ページの冊子にまとめることになりそうなものだけど、それって本当に面白いのかな? ってふたりで話していたんです。ただの冊子だと面白くないよねって。だんだん、なんのためにやるのか、子どもたちに親しんでもらうにはどうするのかと深めていったんです。

谷川俊太郎さんの4編の詩にはそれぞれ個性があって、これは絶対擬人化だと飯田さんと盛り上がったんですよね。そこからどういう形にするか、色々な案を考えていきました。なぜこのような形になったかというと、もちろんお面としても使えるし、このまま飾ってもいいし、閉じて本にしてもいい。自分で好きにしていいデザインになっているんです。tupera tuperaさんの絵自体が素晴らしかったので、それを生かした素敵なものができたと感じています。

 

2018年4月で開館10周年を迎えたいわきアリオス。開館時に詩人・谷川俊太郎さんより贈られた4編の組詩「アリオスに寄せて」からイメージして生み出された4人の「詩の神さま」

 

私にとってデザインはツールなんですよね。デザインの仕事を通して知らない世界に出会えるツールでもあり、素晴らしい商品や会社、人を引き立てるツールでもあります。東京でのアシスタント時代、デザインの師匠から「デザインを道具にするな」と叱られたことがありました。その意図としては「デザインの目的を違えるな」ということだったと思います。

なぜかこの言葉がずっと引っかかっていて。「ツールとして使いこなせる腕がないまま、その便利さに甘えるな」ということだったのかな、と今では思っています。この言葉をきっかけに、ツールとしてのデザインの在り方や強みを考える様になりました。

 

−都会での経験も豊富ですが、いわきでのクリエイティブな活動をどう感じますか?

ウザワ:いわきは、デザイナーとして仕事がしやすい場所だなと感じています。それはいわきにいるデザイナーの先輩たちのおかげで、デザインのリテラシーが他の地域より高いと感じますし、デザインされたものの価値や魅力を分かってくれる人が多い印象があります。先ほどのお面の話もそうですけれど、谷川俊太郎の詩で、絵はtupera tuperaさんで、みたいな仕事ができると思わなかったから、いわきでのデザインの仕事は面白いなってその時感じました。東京にいたら逆にできないことなのかなと思います。

東北のデザイン会社だと、山形のアカオニデザインや福島だとヘルベチカデザインが有名ですけど、いわきにはそういう会社が意外となくて。みんなフリーランスの集まりだから、自然と生き方、働き方を選んでいる感じがします。それはそれで面白いですよね。地域にコミットしたものをいっぱいデザインして、デザイナーの仕事を作るところから始めるというよりも、もうすでにデザインの仕事ができてしまう環境があるのがすごい。地方にありながらそういう都会的な感覚もあって、ほんと潮目な場所だなと感じます。

 

maruttの由来は「まるっと(まるごと)解決する」こと。デザイン事務所だということをあえて名前に入れなかったのは、困ったことを「まるっと解決する」ことが目的であり、役割であると捉えているから。グラフィックデザインに縛られず、問題を解決するために色々なアプローチができるデザイナーでありたいという想いが込められている

 

−デザインに対する想い、こだわりがあれば教えてください。

ウザワ:最近はやっぱりデザイナーの枯渇問題が地方にあるから、普通に誰もができる仕事にしていきたいと思っています。育てるという意識はすごくありますね。素晴らしいデザイナーを一人育てるのではなくて、仕事として成り立つデザイナーを何人も育てたいし、広めたいんです。

デザインができることっていっぱいあって。仕事としても絶対無くならないし、いくらAIがそれっぽいデザインを作れるようになったとしても、ちょっとセンスを入れなくちゃいけないエモいものだったり、見せる優先順位をつけるのはデザイン的思考じゃないですか。それは絶対に必要だからなくならない。デザイナーって全然特殊じゃないし、食いっぱぐれないし。堅実な仕事だっていうのを広めたいですね。

その時に大事になってくるのは、適当にパッと作ったデザインがいいものかどうか分かる目を養うこと。良いデザインはやっぱり良くあり続けなくてはならないし、私もそれを目指さないとと思っています。デザインは誰でもできるけど、それを見る目をよくなるように、デザインのリテラシーがちょっとでも向上するように、地道にやるしかないと思っています。自分がデザインをすることで、デザインでそんなに変わるんだってことを感じてもらえればいいなと思いながら、日々の仕事に取り組んでいます。

 

 

忙しい中、にこやかにインタビューに答えてくださった
氏名 ウザワリカ
プロフィール marutt アートディレクター/グラフィックデザイナー。福島県双葉郡富岡町出身。高校卒業後、上京し専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。卒業後Z&Z大箭亮二氏に師事。CDジャケット等の音楽やアパレル関連のデザインに携わる。その後少年マンガの広告デザイン等の出版系デザイン製作会社を経て、2017年春に「marutt (design shimsu)」をスタート。
東京・福島の他にも東京の離島 ・新島の空き家活用プロジェクト「OIGIE」にも参画しながら、現在は南相馬市小高でNext Commons Lab南相馬のコーディネーターとして活動する。
誰もが互いに魅力を認め合い、自由に表現し、そこに価値が生まれる社会をデザイン的観点から目指す。
webサイト・SNS ・webサイト
https://marutt.com/
・instagram
https://www.instagram.com/marutt_design