11月4日(日)、いわき潮目劇場2018のワークショップとして、「しらみずアーツキャンプ」のメイン会場となる白水小学校のすぐ隣にある川平集会所で、地域の皆さんとの「かかしづくり」を行いました。実行委員会、地域の皆さん、さらには一般の参加者など含めて20名以上が集まり、大小あわせて15体のかかしが完成しました。11月25日のアーツキャンプ本番で、これらかかし作品は「みろくざわ芸術展」に展示されます。お楽しみに!








もともと、なぜ「かかし」かといえば、同じ常磐炭鉱の産炭地だったいわき市好間の北二区で、地域のお祭りの際、お母さんたちがかかしを作って賑やかしに使う取り組みが始まっていて、それに感銘を受けた実行委員会のメンバーが、川平でもかかしを作ってみたいと思ったことがきっかけでした。北二区に打診したところ、ぜひとも一緒にコラボしたいと快諾頂き、北二区で制作されたかかしも何体かお借りして、今回のワークショップにつながりました。
こうしたワークショップが面白いのは、「作業」が始まることで、地域の皆さんの「スキル」が見えてくることです。皆さん、何かしら得意なものを持っている。裁縫が得意な方、料理が得意な方、場を盛り上げるのが得意な方や、おしゃべりが超絶面白い方。いろんな方の得意なスキルがどんどん表に出てきます。そしていつの間にか役割分担ができてくるんです。
そのスキルや技術には「物語」が必ずあります。裁縫が得意なお母さんがひとりいらっしゃいました。聞けば、自分で着物をリメイクして、雑貨や小物を販売しているのだそう。かつて料理屋に勤めていた人、かつて文学を学んで来た人、色々な人たちのスキルや技術やおしゃべりの中に、紛れもない個性や物語が滲み出てくる。それが地域を知ることに繋がっていくんです。



また、お母さんたちが、まるで童心に返ったかのように、あの服がいいとか、こういう化粧がいいとかお話しされているのが印象的でした。参加したお父さんのひとりは「昔は紙で着せ替え人形を作ったから、みんな子どもの頃に戻っちゃったんだな」と微笑みながら話をされていました。かかしという人形だからこそ、何か特別な力があるような気がしました。
今、地域のなかでこうした「軽作業」というものを共有する場はほとんどなくなっていますが、そうした作業を通じて、スキルや技術が交換され、そのうち「あの道具うちにあっから持ってくるね」と、家にあるものもどんどん集まってくる。こういう力こそ、地域のコミュニティに必要なんだなと改めて実感することができました。


単純に「かかしを作ってみたら面白そう」と企画されたワークショップでしたが、「かかし」だからこそ生まれるものがきっとあるのだと思います。かかしに着せる服にも、かかしを作るときのスキルや技術にも、物語がある。そしてそのいろいろな物語が、1体のかかしを作っていく。だからこそかかしは、単に「鳥を避けるため」だけではない効果を地域にもたらしていく。かかし作りを通じて、より深く、私たちは白水という地区を知ることができた気がします。皆さん、大変お世話になりました!
さて、今回のワークショップで制作されたかかしですが、11月25日には、みろくざわ芸術祭の作品として出展されます。会場のみろく沢炭鉱資料館にどのように展示されるのか。ぜひ本番の芸術展を見にいらしてください。一部のかかしは、すでに川平集会所に展示されていて見ることができます。かつての炭鉱町に出現するかかしたち。それは私たちの知っている「かかし」とは、ちょっと違うものとして見えるかもしれません。
11月25日の「しらみずアーツキャンプ」、ぜひお越しください。詳しくはこちらのイベントページからご覧頂けます。