レポート:十中八九ライブinほるる

レポート:十中八九ライブ in ほるる

 

11月23日、いわき市常磐のいわき市石炭化石館”ほるる”で、十中八九のライブが開催されました。こちらのライブ、いわき潮目劇場の公式プログラムとなっておりました。あの石炭・化石館がライブハウスになった熱狂の一夜。改めてこちらでレポートしたいと思います。十中八九は2013年9月に始まったパフォーマンス集団。音楽・演劇・ダンス・美術など多種多様な表現を渾然一体とさせたパフォーマンスで活躍している「渋さ知らズ」を講師として迎え、いわきの文化資源を題材にしたオリジナル作品を多数発表。市内のライブハウスや商店街の空きスペースなどまちなかを舞台に、ワークショップやライブパフォーマンスなどを定期的開催しています。

ライブハウスや野外、まちなかなど、場所を選ばずに活動を続けてきた十中八九。今回のライブはなんと「ほるる」大ホールです。いつもは、恐竜の化石が展示されているあの大ホール。どのようなライブになるのかと期待に胸を膨らませながら会場に向かうと、パフォーマンス開始直後から、様々なパフォーマーが続々と登場。会場の熱気も相まって、いつもの「ほるる」が非日常のライブハウスと化していました。

 

いつもは静寂に包まれているホールに大音響が。

 

自由と規律がめまぐるし入れ替わる見どころ満載の演奏。

 

ライブ中のパフォーマンスも見どころのひとつ。

 

もの言わぬ化石。そして、動き、表現しまくる人たち。その不思議なコラボレーション。いつもは静寂に包まれている展示ホールですが、この日は古代の地層から恐竜たちが姿を表し、恐竜の鳴き声やうめき声が聞こえてきたように思います。その存在が表現者にも乗り移って、楽しげな演奏のなかに、独特の「凄み」が感じられました。観客もそれを感じ取ったのか、前のめりになりながらパフォーマンスを楽しんでいたように思います。

十中八九の楽曲のなかには、フタバスズキリュウや黒いダイヤなど、いわきの化石や石炭にまつわるものが多くあります。石炭や恐竜たちとの「邂逅」は、表現者たちだけでなく、楽曲にとっても特別な時間になったに違いありません。ライブハウスやまちなかで演奏するよりも、歌詞や楽曲に込められたメッセージが増幅していたように思います。楽曲も自分たちが最大限活かされる場でのライブに喜んでいたことでしょう。

会場は音響設備が整っているわけではないので、ライブハウスなどに比べて音が反響してしまうのですが、それがかえって不気味さや不穏さを感じさせ、重低音が体のなかに反響するようで、いつにも増して十中八九の即興の奥深さを感じさせてくれたと思います。会場と楽曲の組み合わせでここまで楽曲が違って感じられるのかと驚かされつつ、やはりこの十中八九は単なる演奏家集団ではなく、「演劇」のようなものとして存在しているのだと再確認できました。楽曲の構成や表現者の動きにもメリハリがあり、それはまさに「演劇」のように物語をもって紡がれているように感じるのです。そして、演者がとてもいきいきとし、個性が浮かび上がって感じられました。

 

後半に進むほど演奏者のテンションも上がり、うねりのような熱気が会場に訪れました。

 

十中八九メンバーであり、いわき潮目実委でも企画に関わるユアサミズキさん。

 

多くの楽曲の作曲に関わるオリティさん。この日のパフォーマンスも最高でした。

 

ひとりひとりが堂々と、そして楽しそうに表現できる。それも、十中八九という「場」の力。

 

それぞれに「輝ける場所」が用意されているのも素晴らしかったです。

 

メンバーの気持ちが統一されていないと、ここまでの即興演奏はできません。

 

見ている人たちも、いつの間にか演奏に参加しているような錯覚を覚えてしまうのです。

 

これだけのメンバーがいながら、それぞれに「自分を発揮する場所」が用意されていること。そして、即興のバラバラ感のなかにも、しっかりと意志のようなものが通っていること。それは、そう簡単にできるものではありません。普段の練習や稽古のときから、「自分という存在が受け入れられる」という土台が用意されているのでしょう。十中八九という集団の「場」としての深さに気づかされました。

つまり、もちろんメンバー個々人の技量や経験もあると思いますが、それにも増して、十中八九の演奏には「あなたのそのままでよい」という空気に包み込まれているように感じられるのです。だからこそ演奏者も思い切り自分を出し、失敗を恐れることなく演奏できるのでしょう。そのような演奏だからこそ、観客席に座っているのに、いつの間にか「そちら側」に履いているような感覚になってしまう。その意味では、この日の演奏には、演奏する者とそれを見る者という境界を壊してしまうような「潮目」のようなものが作られていました。

そして改めて、いわきの文化について語る時、化石、つまり「地質」にまでその源泉を求めていくということの意味深さを感じました。石炭だけだと、文化的に遡れるのは江戸末期くらいだと感じてしまいますが、それを「地質」や「地学」として見ると、容易に数千年、数万年を遡ることができます。現代に生きる私たちが、まさにその土地の「土」と語らい、そこから多くのものを読み取ろうとする。そのようなプローチもまた、地域の文化事業に求められているのかもしれません。十中八九ライブinほるる。演奏やパフォーマンスだけでない、様々な気づきを得ることができる素晴らしいライブでした。

報告:いわき潮目劇場アーカイブ班 小松理虔

写真提供:橋本栄子