レポート:いわき潮目劇場オープニング

10月26日、「いわき潮目劇場」のオープニングイベントとなる「潮目劇場」が開催されました。会場は、JRいわき駅南口のペデストリアンデッキ。夕方の時間帯に開催されたこともあってか、帰宅途中のサラリーマンや高校生が立ち寄って行く姿が多く見られました。

イベントは2部構成となっており、第1部では「いわき潮目劇場」の実行委員が、これから開催していくプログラムについて紹介。さらに、いわき市立総合図書館の夏井芳徳館長による「潮目」をテーマにした講演がありました。続く第2部では、ペデストリアンデッキに設置された「こたつカフェ」を舞台にトークセッションが繰り広げられました。今回のレポートでは、この「潮目劇場」の様子をお伝えします。

 

FMいわきの人気パーソナリティ、ベティさんを司会に迎えての第1部。

 

第1部は実行委員の皆さんからのプレゼンです。

 

廿三夜講復活プロジェクトについて解説する菩提院の霜村さん。

 

—「潮目文化」の担い手が集合

 

第1部では、「いわき潮目劇場」の中で開催されるプログラムの中でも、「玄玄天」「十中八九LIVE! in ほるる」「廿三夜講復活プロジェクト」「こたつで潮目計画」「小名浜本町通り芸術祭」の紹介が行われました。実は、「こたつで潮目計画」以外のプログラムは、これまでにも、いわき市内各地で開催され、活動が蓄積されてきたものです。それぞれの活動を、「いわき潮目劇場」のプログラムとして開催していくことで、どのような「潮目」を意識し、創り出して行くのか。

これまでの活動に対する思いとあわせて、作り手の皆さんの熱い思いを聞くことができました。続いては、いわき市総合図書館の夏井館長による、「潮目」をテーマにした講演。いわき市という1つの自治体が持つ文化の多様性について、伝統芸能などを例にお話がありました。

夏井先生のお話で印象的だったのは、いわきの文化の多様性と「敗者の歴史」です。いわきは、関ヶ原と戊辰、両方の内戦で2度とも敗戦した珍しい地域だと夏井先生はいいます。勝者ではなく敗者の歴史から、今一度文化を見直す。これはとても大事な視点なのではないかと思わされました。確かに、江戸時代に完成した磐城平城は、伊達政宗を監視するための防衛拠点として築かれたものです。

いわきの文化と呼ばれるものは、どのようにして構成されたのか。その歴史背景を考えながら、現代に落とし込む。それはとても壮大で、好奇心のくすぐられる作業ではないでしょうか。夏井先生のお話、潮目というものを考える上で、とても示唆に富むものでした。

 

夏井先生の講演。短時間でしたが、潮目について要点をまとめてお話し頂きました。

 

—「こたつカフェ」で地元トーク

 

今回の「潮目劇場」の目玉は、なんといってもペデストリアンデッキに現れた「こたつ」。会場には4つのこたつが円形に配置され、観客は自由に出入りしながら、トークセッションを聞いていました。最初は、通路に突然現れたこたつに戸惑っていた観客の皆さんでしたが、イベントが進むにつれくつろいだ雰囲気になっていきました。観客の中には、高校生の姿も。友達と一緒にこたつでお菓子を食べたり、1人でトークをじっくり聞いたりと、さまざまにイベントを楽しんでいたようです。

トークセッションでは、第1部で各プログラムの紹介をした「潮目文化」の担い手の皆さんが、地元トークを展開。それぞれの地元にあるラーメン屋さんトークから、子ども時代に利用したおもちゃ屋さんの思い出、地域ごとに異なるお葬式事情まで、幅広い地元トークが繰り広げられました。思わず「あるある!」とうなずいてしまうお話や、「そんなのアリ?」と驚きのお話など、いわきの奥深さを感じるトークセッションでした。

 

平VS小名浜トークバトルでは、お互いに地元自慢を展開。

 

たまたま通りがかった人たちが、興味深そうにトークバトルを見守っていました。

 

いわきフラおじさんもこたつに乱入!

 

地元の話は尽きません。誰しもが持っている地元への思い。そこから文化は築かれるのではないでしょうか。

 

その一方で、実は、こたつに入った観客の中でも地元トークが展開されていました。狭いこたつで暖かさを分け合っていると、親近感が生まれます。「今日はどちらからですか?」「湯本からです〜」なんていう会話が弾み、観客同士で意見交換をする様子も見られました。

 

—バラバラであることが「面白い」

 

トークセッションで印象に残ったのは、「地域ごとに違う」というのがいわきのアイデンティティであり、面白さなのでは?という意見。いわきを構成する地域はそれぞれが多様性に富み、味のある面白さを持っています。「オールいわき」という言葉もありますが、むしろ、バラバラであることが「いわきらしさ」であり面白さである、ということに、市民が気づき始めているのでは、という意見が交わされていました。

「地域ごとに違う」という特徴を、「いわきらしさ」として生かせるかどうかは、市民一人一人にかかっているように思います。それぞれの地域の「違い」を、面白いと感じ「強み」に変えていくためには、さまざまな人との対話を通じて、地域のことを理解することが必要なのではないでしょうか。

 

こたつに入りながらトークを見守る皆さん。それぞれに議論が巻き起こっていました。

 

ただのコタツが、文化を語る「場」になってしまう。とても興味深いプロジェクトです。

 

こたつというアイテムは、このような理解を、ゆるやかに生み出すことに一役買っていたように思います。こたつに一緒に入ることで生まれる絶妙な親近感が、初対面の人との会話を可能にし、出演者と観客/観客同士に新たなコミュニケーションの場を開いていました。

さまざまな可能性を秘めるこたつ。今後の「こたつで潮目計画」への期待が高まりますが、これからは、小名浜・湯本・植田・田人での開催が予定されています。この冬は、「バラバラだからこそ、面白い」を体感するため、市内各地に出現するこたつを訪れてみてはいかがでしょうか。

レポート:潮目文化アーカイブ班 小宅 優美